獨協医科大学眼科教授

円錐角膜の治療法について

獨協医科大学病院 眼科学教室 教授 妹尾 正

円錐角膜は名前が示す通り、角膜の中央部が円錐形に突出してしまう原因不明の疾患です。角膜の変形により見え方がゆがんでしまうため、次第に視力が低下してしまいます。以前の円錐角膜治療法は、まず眼鏡かハコンタクトレンズで視力を矯正し、それができなくなると角膜移植を行っていました。現在でも角膜移植をしなければ視力を取り戻すことができない患者様は少なからずいらっしゃいます。しかし近年、角膜移植をしなければならないほど重症化する前に、とるべき治療法がいくつか開発されました。

一つはクロスリンキング(CXL)という治療方法で、リボフラビン(ビタミンB2)を点眼した後に紫外線を照射し角膜を硬化させます。角膜が固くなることで円錐角膜の進行が抑制されます。今一つは角膜内リング(ICRS)挿入術という方法です。これは角膜の中にプラスチックでできたリングを挿入することで角膜の歪みや突出の程度を和らげる方法です。当院ではICRSを6年前から、CXLを昨年から導入し多くの円錐角膜患者様の治療を行っております。

ICRSを行うために必要なファムトセカンドレーザーやCXLに必要な紫外線照射機(CXL-365)の導入に当たっては、栃木県アイバンクの皆様から多大なご支援をいただき今日があることを、この場を借りて心から御礼申し上げます。

栃木県アイバンク「光とアイ」16号より

角膜移植の現状

近年の眼科手術のなかで角膜移植術は目覚しい発展を遂げ、さらなる高みへと発展しつつあります。多くの可能性と発展をパーツ移植という考えに基づき細分化された種々の術式へと枝分かれしてきているのが現状です。角膜は直径10mm厚さ0.5mm足らずの組織ですが、地層のように5枚の層からなり3種類の細胞(内皮細胞、実質細胞、上皮細胞)から成り立っています。従来角膜移植は角膜全部を取り換えろ全層角膜移植のことを指しましたが、現在では全層角膜移植は角膜移植の中の一手技となり、パーツごとに角膜上皮、実質、内皮に対する移植術が行われるようになり、更にそれぞれの手技が発展しその成果が報告されております。こうすることにより一人のドナーからいただいた大切な角膜から必要とする部位だけを移植することで、合併症の軽減や、一つの角膜から複数の患者様に移植する手術が可能になってきております。

また、エキシマレーザーやフェムト秒レーザーといった新たな先進医療機器の導入や、培養細胞移植などの先端技術も加わり患者様のニーズに応え得る新たな局面を迎えています。ただ、私が皆様や特に医療関係者に伝えたいことは、これらの発展はドナー角膜があってこその成果であるということです。いくら紙の上で理想の治療や手術を想像してみても結果が出せなければ意味がありません。勿論、よい結果のみではありませんし、患者様の手術に対する期待や、ドナーの方やご親族を含めた方々の眼球提供に至る熱い気持ちが、重く我々の心にのしかかってきます。そうした気持ちこそが医療の発展につながっているのではないかと思っております。おかげさまで栃木県は全国屈指のドナー角膜供給県です。当院で多くの患者様の開眼手術を行える現状に日々感謝をしております。

栃木県アイバンクに携わるライオンズクラブの方々や、県内のドナー登録をされた方々の熱い思いに、心から感謝いたしております。日夜努力を重ねていく所存ですので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

栃木県アイバンク「光とアイ」11号より