数年前のある日、いつものように父が会社にふらっとお茶を飲みに来ました。たわいもない話をしていたら何気なくカウンターに置いてあったアイバンクの小冊子「光とアイ」を見て献眼の話になりました。一人の献眼から二人の方が光を取り戻せたり、角膜は100数十年の寿命がある事、チャリティーイベントの収益金を寄贈している事など自分がメンバーであるライオンズクラブの活動の一つとしていることなどを説明しました。
父は長年糖尿病を患っており合併症による網膜症、また人口透析などを受けており片目はほとんど見えていない状態でした。「こんな目でも役に立つのか?」と言うので、自分も知識がありませんでしたがその場ですぐネットで調べて、「大丈夫、使えるよ!」と話しました。「じゃぁそん時は使ってもらうか」と父。生前二人でこんな雑談をしていました。
昨年夏、闘病も空しく父は他界。安らかな寝顔を見てふと献眼の話を思いだし、事前に登録していなかった父ではありましたが、兄弟たちにも献眼の説明し快く承諾してもらい献眼することができました。
父の角膜がどこかで誰かのお役に立っていると思うと、少し暖かいものを感じずにはいられません。
最後に、光を必要としている人へ、献眼の輪が広がって、たくさんの光が愛が届くことを願うばかりです。
(公財)栃木県アイバンク「光とアイ」16号より
故 天谷 一男 様